嵐の相葉雅紀(34)が主演を務めるフジテレビ「貴族探偵」(月曜後9?00)は17日、30分拡大でスタートする。主人公は召使いに推理をさせ、本人は何もしないという異色の探偵。メーン演出を手掛ける名匠?中江功監督(53)は主人公のキャラクター作りに腐心。第1話の1シーンで、異例の撮り直しを行った。産みの苦しみを味わったものの「新しいヒーローを作りたい」と、いつも以上の熱量で撮影に臨んでいる。
1987年4月からドラマ枠になった同局の看板枠「月9」の30周年を飾る話題作。原作は、2011年に「隻眼の少女」で日本推理作家協会賞に輝くなど、推理小説の常識を覆す作品を世に送り続けている俊才?麻耶雄嵩(まや?ゆたか)氏の「貴族探偵」「貴族探偵対女探偵」。己を「貴族」と名乗り、年齢も家族も住所も本名も不明という謎の青年(相葉)が「推理などという雑事は、使用人に任せておけばいいんですよ」と言い放ち、自分は事件関係者の女性との会話を楽しみ、遊びに興じながら事件を解決に導く。
貴族探偵の執事?山本に松重豊(54)、メイド?田中に中山美穂(47)、運転手?佐藤に滝藤賢一(40)。貴族探偵と同じ事件に出くわし、推理対決を繰り広げる探偵?高徳愛香に武井咲(23)。愛香の師匠?喜多見切子に井川遥(40)。ドラマオリジナルの刑事?鼻形雷雨に生瀬勝久(56)と豪華キャストが勢揃いした。「ストロベリーナイト」「僕のヤバイ妻」などで知られる脚本の黒岩勉氏や数々の「月9」作品で知られる演出の中江監督ら、相葉が15年4月クールに主演した同局「ようこそ、わが家へ」のスタッフが再集結した。
注目は貴族探偵のキャラクター造形。中江監督らスタッフは貴族の研究者やマナー研修の講師らを取材し、立ち振る舞いや言葉遣いを研究。「腕は組まない」「ポケットに手は人れない」などの細かい動作も決め「常に淡々としていて、あまり激昂しない。話し方もサラリとした人物」を設定し、3月中旬、貴族探偵の初登場シーンを撮影した。しかし「やってみると、あまりに変化がなく、おもしろくなかったんです」。中江監督は苦笑いしながら打ち明けた。
「相葉君のセリフにほとんど抑揚もつけず、なるべく抑えて演じてもらいましたが、ロボットのように無機質になりすぎて。このキャラクターで最終回まで行くのは厳しい。主人公として、もうちょっと魅力的なキャラじゃないと、連続ドラマとして持たない。相葉君のよさが出ない。撮り終わった時、自分の中で『違うなぁ』と違和感がありました」。相葉をはじめ、共演者に「違うアプローチで、もう1回、撮り直したい。申し訳ないですが、お付き合い願えませんか?」と説明。スケジュールを再調整し、その1シーンを5日後に撮り直した。
「貴族は荘厳なものと思いすぎていて、硬いキャラになっていたので、もう少し柔らかく、普通の人っぽい、人間味のある人物像に変えました。貴族探偵と使用人の関係性も、当初は貴族探偵が一歩引いて使用人たちの後を付いていくというイメージでしたが、自由気ままな貴族探偵の後を使用人たちがカバーしながら付いていくという感じに方向転換しました」
貴族としての品はありながら“庶民派”の要素を取り人れた。貴族とは相反するようにも映るが「新しいヒーローを作りたかったので。愛されて、かわいくて、カッコよくて。そういう要素を全部持っていた方がニューヒーローとしてはいいんじゃないかと思いました。硬いキャラだと、愛されにくい。ファニーな感じにシフトしました」
キャラクター変更のため、同じシーンを撮り直すのは、中江監督のキャリアにおいても「初めてかもしれません」という異例さ。それもこれも、連続ドラマの成否は第1話が大きなウェートを占めるため。以前の取材でも「連ドラ初回のキャラ付けは一番気を使います」。今回も、1シーンといえども、疎かにできない。ましてや、主人公の初登場という肝心な場面。撮り直しの労力は惜しまなかった。
時間とお金が余分にかかるのは「非常に贅沢な話」としながらも「今回、撮り直さないと、間違いなく1クールずっと後悔すると思いました。産みの苦しみを味わいましたが、撮り直して、よかったと思います。(第1話として)振り幅のある人り方をしたので。“これしかない”とキャラを固定してしまうと、変化のしようがないので」。貴族のエッセンスに相葉が持つ親しみやすさが加わったが「それでも、今までのドラマやバラエティーで見ている相葉君とは違いますよ」と手応え。相葉の新境地になるニューヒーローは今夜、ついに姿を現す。
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