芸能プロ創設者のなかにはアーティスト出身者もいる。現在の芸能プロの形態をつくった「渡辺プロ」の故?渡辺晋さんはジャズベーシスト。「ホリプロ」の堀威夫氏はバンドマン。「田辺エージェンシー」の田邊昭知氏はGSのドラマーだった。滝沢秀明(36)もそのひとりに名前を連ねることになるが、現役バリバリの俳優業を引退し、育成に専念するのはまれなケースだ。
「大半の事務所は専門家に育成を依頼し最終的な結論は社長らが見極める。ジャニーズはジャニー喜多川社長(86)自らが育成するシステム。滝沢はジャニー氏に直接、育成された経験からジュニアの気持ちも理解できる。その意味では理想的かも」(芸能関係者)
アイドルを育て続けるジャニー氏の後継者としてふさわしい人物と言えるが、滝沢に託した夢はそれだけではないという。
「ジャニー氏は宝塚を見て研究し、今のジャニーズの舞台をつくった。構成を見ても大階段の舞台設定で、メインになるスターを中央に配置。スター候補のジュニアが脇を固める。まさに宝塚」と演劇関係者が言うように、ジャニー氏の長年の夢は「男版?宝塚」の実現にあったといわれている。
「本当は日比谷の街全体をNYのブロードウェーのようにするのが夢だそうで、今も帝国劇場など日比谷界隈の劇場で公演を行うほどこだわりがある。滝沢が後継者になることでジャニー氏がつくった土台を引き継いで夢を託すことができます」(テレビ関係者)
滝沢にバトンタッチすべく、ジャニー氏は新たなプロジェクトを発表。東京五輪に向けた新グループ「2020」を立ち上げた。ジュニアから選出されるメンバーは史上最多の総勢40人。年明けにも動き出すという。当然、滝沢もジャニー氏の補佐として参加となる。
「先見の明のあるジャニー氏が早くから“滝沢歌舞伎”をやらせたのも、後継ぎになるのは滝沢と思いを巡らせていたからかもしれません」(元ジャニーズ担当記者)
滝沢は「経営には関わらない」と明言。バトンはスムーズに渡ったが、問題はバトンを受け取ってからの滝沢だろう。
「次期社長のジュリー氏は一線で活動しているタレントのマネジメントで手いっぱいなのが現状。これ以上、ジュニアを増やし、売り出しにかける時間はないと嘆いているといわれている。今までは叔父だから言いにくかったが、滝沢なら言いやすくなる。そこで衝突が起こらないとも限らない」(テレビ関係者)
演出面でも不満分子が出てくるとの見方もある。
「舞台演出はすでに少年隊の錦織一清(53)が演出家として実績を積んでいます。評判も良く、一時はジャニー氏の舞台の後継者とも呼ばれていました。ジュニアの育成まではやらなくても、滝沢とは演出家としてライバル関係になる。元光GENJIの佐藤アツヒロ(45)も演出部門に進出しており、滝沢にとっては先輩だけに、どう役割分担するかも気になるところです」(同前)
年商1000億円超ともいわれ、“帝国”とも形容されるジャニーズ事務所。次世代への権限委譲は、はた目にはスムーズに進んでいるかに見えるが、そこかしこに火種はくすぶっている。