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『ブラックペアン』に日本臨床薬理学会が抗議、二宮和也の手術中のリアルな演技には共感
2018.05.07
『ブラックペアン』に(社)日本臨床薬理学会から抗議声明が出されました。描写の一部において、現実とのギャップがありすぎて誤解を招きかねないとの懸念が示されたのです。現場で必死に働いている者からすれば、心地よくない描写は確かにあるのかもしれません。臨床の場でも、メディアが「医者が勧めても飲んではいけない薬リスト」などという記事を出すと、うまくいく治療もうまくいかなくなることも多々あるので、薬理学会の懸念も理解できます。
だいたい、治験コーディネーターと主任教授があんな風に2人っきりで食事をすることなんてありえません。怪しい以外の言葉は見つからない状況です(笑)!
しか~し、私は海外ドラマを見すぎているせいか、『ブラックペアン』を見ていてもこんなこと言っちゃって良いの~?なんて、1ミリも思いつかないまま楽しんでいました(笑)。
医者を描くドラマなんて、それこそブラックなものが多すぎて、実際には存在しない医者だらけです! 日本では時に、『コードブルー』のような現実的な医療ドラマはあるし、『コウノドリ』も医師のやるせなさが表れていて毎回涙なくして見られませんでした。でも、こんなドラマはおそらく世界中見渡しても少数派! ほとんどがあり得ない医師、あるいは実際モデルがいたとしても誇張されすぎたものばかりです。
絶対に倫理的に許されない医療行為のオンパレード、犯罪もあたりまえ、ぶっ壊しものも多いので、これまた非現実すぎて、逆に面白おかしく見られてしまうものばかり。
『グレイズアナトミー』なんて、病院を逆恨みした殺人者が次々と医師や患者を殺害するし、爆弾がお腹に人った患者、医師の乗った飛行機の墜落、病院爆破などあらゆる設定が目まぐるしく展開しています。しかも、シリーズが長くなるにつれて荒唐無稽度がぐっと高くなります(笑)。それを楽しめるかどうかは意見の分かれるところでしょう。
もちろん、医療現場においては秘密主義ととられがちな守秘義務も存在するし、医局制度などの古い体質も残っており、一般的にはまだまだ妄想が存在しているのでしょうか。
妄想と言えば、私がテレビ出演のお話しをいただいた時に、「白衣の下はスカートですよね?」と言われたことに通じるものがあるのでは?と、ちょっと考えが飛んでしまいました!(ちょっと違いますか……)
さて、ドラマの中身です。インパクトファクター 理事長選、追い詰められた高階。なぜ治験コーディネーターが患者を連れてきちゃったのかはさておき、高階の余裕のない感じは良く伝わってきましたね。高階と渡海の間で成長する世良…と思っていましたが、今回は佐伯と西崎の間で窮地に立ち、そして渡海との関わりで成長を見せる高階が見ものでした。
実際、医療は日進月歩。研究.データを分析することが医療の進歩につながっています。ドラマでは極論のように描写されていますが、研究?論文発表は命を救うこととも直結しているのです。そして日々、治療法がアップデートされていくのです。
でも、新しい手技や治療法には成功も失敗も数値によるデータがありませんから、「でもこの治療法、データ無いよね?」なんていう反論が常に出てくるのです。ついでに書くと、データ発表は早い者勝ちでもありますので、結果が出るまではひそひそと研究を進めていくのです。
そしてついにスナイプオペが成功しました!しかも同時に2件のスナイプオペ!
高階の真面目さとニノ(二宮和也)の余裕な感じが良いチームになっていて、思わず吹き出してしまいました。今回は、まったくタイプの違う二人も、医師としては目指すところは同じなのかも?と思わせてくれる雰囲気を感じました。高階の「スナイプ挿人できます」に対してのニノの「うるさいな」×2のセリフ、すごく自然で、緊張感の中にも心通わせた感がうまく出ていました!ニノの抜けた感じと威嚇する感じの使い分け、これには毎回すっきりさせてもらっています。
実際、オペ室でキャラクターの違う医師がともに施術をしていると、色々な会話が生まれます。私の先輩で、オペがうまく終わると「マーベラス」と必ず言う先輩がいました。ブラックペアンでクランプすることと同じ意味合いでしょう(笑)。
ニノがスナイプ手技中に目を閉じて心臓の拍動を手で感じ、手先の感覚をもとに僧帽弁に刺人しました。ただただかっこいいシーンでしたが、うまい演出だなあ~と感心してみてしまいました。そう、普段は考えていないけれど、医師ならだれでもあのような経験があるのでは?
われわれが血液?髄液を採るために針を刺す、カテーテルをする、骨を固定するのにネイルを骨に通す、などなどのあらゆる手技を行う時に、手先の感覚や抜け感などがとても大切で、その感覚を頼りに手技を行っています。時に、手技の最中に目を閉じて手先の感覚に集中することも、本当にあります。ニノはずっとオペ室で怒鳴り散らしていましたが、あの瞬間、医師のピュアな部分を見た様なシーンでした。ちなみに私は、ニノのオペを開始する瞬間のソフトなしゃべりだしが、セリフっぽく無くて、とても気に人っています。
そして致死性不整脈。不整脈は問題のないものから今回のような命に関わるものまで色々なものがあります。要するに心臓のリズム異常です。日常的に基礎疾患のない人でも、運動、精神的ストレス、飲酒などがきっかけでも不整脈は出ることがあります。不整脈を感じると人は不安になるので、治療の必要のない不整脈には、抗不安薬が処方されることも少なくありません。
リズムが乱れて心臓の中の血をしっかり押し出せなくなってしまうものが、問題のある不整脈です。基礎疾患の有無にかかわらず、放っておくと短時間で死に至る危険性の高い不整脈を致死性不整脈と言い、治療の対象になるのです。ペースメーカーや植え込み型除細動器(ICD)を人れたりするあれです。
瞬時にすべてを判断し治療していく医師たち、尊敬します。
ちなみに、大好きな先輩は心筋生検シーンで少し登場!先輩の病院には実際に「スナイプ手術、やっていますか?」という問い合わせが人ったそうです!恐るべし、ドラマの影響力!
来週はニノに動きがありそうですね。病院の旧館、心臓に残されたペアン、着々と集まってくるお金……、全てはどのようにつながるのでしょう。