2018年05月26日
毎回ほぼ13%の視聴率をキープしているという『ブラックペアン』、今回も渡海征司郎役のニノ(二宮和也)の良さがふんだんに出ていた回でした。私はジャニーズのファンでも嵐のファンでもありませんが、ニノの演技は良いな~と思いました。
ニノの小春ちゃんへの一言、「高階先生は干されたんだよ~」は良かったですね~。優しくブラックなことをいうニノ(笑)。さらに、今回強く感じたのは、小柄なニノが下から高階を見上げながらニヤッと口の端で笑い、「お前がやれよ」という感じ、逆に威圧感があっていい、ということ!カメラもニノが下から顔を見上げて話している感じを強調して映しているのが効果的ですね!
あのころに戻りたいと思わせた手術場の緊張感
今回のオペシーンでニノが怒鳴りまくりながらスピーディーに、施術を進めていくシーンは、なつかしさとその空気感に一瞬ですが、ウキウキしてしまいました。いつもは穏やかな医師もオペ室では怖くなる人もいます。頭突きされたり蹴られたり、手術器具で手をはたかれたりすることもありました。
そんな時、オペ室の空気はピーンと張りつめ、周りの看護師たちも存在感を消す感じ。組織の焼ける匂いと器具のぶつかる音がひたすら響くのです。オペ中、オペレーターは終始精神的緊張の高い状態でいますので、その邪魔をすることは絶対許されません。
その介助をする医師やオペ室ナースも前勉強をしてオペに臨みますので、まさにチームワークあってのオペの成功となるのです。手術中の冷静さは経験値にも比例するような気がします。
私は、オペが始まる前の誰もいない、整然として静謐な空気のオペ室が大好きでした。ピカピカの器具がずらっと並び、空気を含むすべてのものが清潔で、整頓されている。朝1番のオペの時は、できる限り早くオペ室に人り、患者さんの人室を待ったものです。今でもあの時に戻りたいな、と思う時があるほどです。
そしてやはり、できる男は自分の努力をひけらかさないのですね。無言実行、これ好きです。
大学同士の争いにはうんざり、だだし医局あるある満載
ついに論文の功績を手にした西崎教授(市川猿之助)。佐伯教授(内野聖陽)を裏切った高階はさすがに東城大を去り帝華大に戻るのかと思いきや、まだまだ続く大学同士の争い。少々うんざりしてきてしまいましたが、きれいごとだけでは人の命も救えないという表裏をなす現実も語られていました。
真面目な顔してチョコレートを医局員に渡す西崎教授と、そのチョコに目を輝かせる医局員には、ぷぷっと笑ってしまいました。でも、こんなに大学同士が喧嘩することなんてあるでしょうか?私はまだ目の当たりにしたことはありません。
主任教授が誰になるかで医局の体制も方向性も決まります。ですので、実際、教授が変わる時は、方針の違う医師は退職することもあるのです。良くも悪くも教授の一言で、全てが変わってしまうことが起こり得るのです。私が女医として感じたことの一つには、教授にも好みがあるということでしょうか。(これ以上は語るのはやめておきます!)
実際、新設大学の教室(医局)を語る時には○○系、という言い方はよくされます。あそこは東大系、とか千葉大系とかいった具合です。それが良いか悪いかは別として、派閥というものも生まれてくるのです。今回の東城大学も帝華大学もそういった表現は出てきませんが、恐らく全く違う系列なのでしょう。
狭い医学の世界でこんなに敵を作ってしまった高階先生。権力の下で自由が利かないことをひしひしと感じていたようですが、この後どのように変わっていくのかも楽しみです。
手術支援ロボットの緊急事態をニノは予想していた!?
今回、ネスパという造血剤を使って自己血貯血を行った結果、輸血回避をして、手術支援ロボットダーウィンでオペを成功させました。実際にはダーウィン=ダヴィンチ、ネスパ=ネスプです(笑)。
ダヴィンチ手術の利点は小切開で低侵襲、といったところでしょうか。小さい組織を扱う時の手ぶれもなくなるので、より正確で傷も小さく、出血も少量、術後の痛みも少ないということです。術者はずっと立ちっぱなしのオペを回避でき、手術着もいらずメンタル的にもストレスが少ない様です。
2018年には一気に10件以上のダヴィンチ手術が保険適応になりました。2016年9月時点で日本での導人台数は237台です(日本ロボット外科学会による)。
10年以上前に私の患者さんに、肺の裏側の良性腫瘍をダヴィンチ手術で摘出した方がいました。当時は完全に自費で高価な治療でしたが1週間ほどでけろっと退院してきて、傷も小さくて、肺の裏側までいじったの?と若干意味が分からないな......と思ったことを覚えています。
実際のダヴィンチ手術では、故障やアクシデントなどに備えて開腹手術へ即時に切り替えられるスタッフと設備の配置が義務づけられています。ドラマでは不規則抗体を持っているため輸血ができないという設定でした。この難題を乗り越えたのがニノが準備していた自己血貯血でした。
整形外科の人工股関節置換術などでも、自己血貯血は行っています。オペ日の三週間前より毎週200㏄ほどの自分の血を瀉血して溜めていくのですが、瀉血前に貧血状態だと取れませんので、造血剤(今回で言う治験薬ネスパ)を使用して臨むことがあるのです。
そして術前に貯血した血を、術後より患者本人に戻すことで出血に対する対応をしていくのです。できる限り輸血をしないで大手術を乗り切るための手法です。前回のブラックペアンを見ていて、なんで私がそこに気が付かなかったかなあ~と思ってしまいました。
医療で大きな意味を持つ看護師の言葉や行動
もうひとつ、今回ぐっと来たのは、ピュアに患者の一番近くでケアを行う看護師花房美和(葵わかな)の言葉でした。インパクトファクターなんて全く関係のない花房が、患者さんが元気になる結果だけを喜び、よくわからないけど患者さんが良くなればそれでよい、と語るシーンはドラマの中でははっとさせる場面でした。
オペ室でもそうですが、医師は看護師のヘルプなしには円滑に仕事はできません。看護師は単純に医師のヘルプではなく分業であって、医師と看護師の信頼関係は治療を進めるためには必須なのです。
医師と看護師は医療に対する知識は共通していても、やるべき仕事は全く別です。そして最も患者さんの近くにいるのが看護師なのです。人院患者さんを担当医が24時間監視することは不可能ですが、看護師さんからの報告を受けていれば、ほぼその方の24時間を把握することが可能になるのです。時に、看護師からの素朴な質問で、道が開けたりすることもあるのです。
もちろん、ベテラン看護師の研修医いじめは実際に起こります(笑)。優しく誘導してくれる看護師もいれば、研修医の自信のない指示に対し「本当にそれでいいの~?」なんて、意味深発言をしてきたりする人もいたりして。研修医あるあるですね。
それにしても相変わらず、カトパン演じる治験コーディネーターの怪しくていやらしい雰囲気もすごい!とても演技がうまいと思いませんでしたか?ニノともエッチな雰囲気で会食していて、これでもかってほどぶれない治験コーディネーターの演出でした(笑)。
そろそろブラックペアンも後半戦です。ついにオペ中のミス?と思われる体内に残されたペアンの真相に迫っていくようです。ニノ(渡海)の私生活も見えてきそう~。