25 小众文艺片2010/2/21 13:30:00
33 = =2010/2/21 13:32:00
そんなハードルの高い小説の映画化に挑んだのは、荒戸源次郎監督である。鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」などの製作を手掛け、初めて監督を務めた「赤目四十八瀧心中未遂」は毎日映画コンクール日本映画大賞などを受賞した。映画界の風雲児だ。
葉蔵(生田斗真)は青森の資産家の息子。東京に出てきて、遊び人の堀木(伊勢谷友介)と出会う。そして、「酒と女」を覚え、自堕落な生活を送るようになる。
飲み屋で働く常子(寺島しのぶ)と心中未遂事件を起こす。出版社の編集者で子供のいる静子(小池栄子)と同棲(どうせい)し、やがて別れる。たばこ屋の娘の良子(石原さとみ)と結婚するが、良子の不貞を目撃して自殺未遂。さらに、モルヒネ依存症になってしまう。葉蔵と女性の挿話が次々とつながり、葉蔵はひたすら落ちていく。
原作の筋立ては、ほぼ踏襲した。美術やカメラが画面を重々しく作り込んでいる。しかし、生田には演技らしい演技をさせず、出来事を説明していくだけ。葉蔵の独白も、思い切りよく割愛した。
映画は一見、のっぺりとしていて、拍子抜けするような素っ気なさだ。しかし、次第に独特のムードを醸し出していく。
生田は美形だが、生活感は皆無といっていい。スクリーンの上に喜怒哀楽は生じず、空っぽの葉蔵がただ存在する。葉蔵は終盤、高齢の女性で世話係を務める鉄(三田佳子)と暮らし始める。2人が互いを受け人れるようになると、画面は虚無に支配される。
どん底で互いに求め合う人々が、濃密な生を紡ぐ。その異世界は不気味ながら、不思議と居心地がよさそうでもある。太宰文学の骨格を借りながら、ねっとりとした手触りは、まぎれもなく荒戸映画なのである。2時間14分。有楽町スバル座ほか。(勝)
◆もう一言
女優陣のキャスティングは、圧巻といえる顔ぶれである。ただ、生田が演じる葉蔵の美しさを前面に出し過ぎたせいか、彼が破滅に向かうまでに抱き続ける退廃的な心情は、あまり感じられなかった。(鈴)
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<今週の執筆者>
勝田友巳(勝)▽高橋諭治(諭)▽細谷美香(細)▽鈴木隆(鈴